EC(電子商取引)担当者がデータサイエンスを学ぶ理由は多岐に渡りますが、その中心的な理由はデータドリブンな意思決定を可能にし、ビジネス成果を最大化するためです。
ECでは膨大な量のユーザーデータが生成されます。これらのデータを理解し分析する能力は、顧客の行動パターンを把握し、マーケティングや商品推奨などの戦略を最適化する上で欠かせません。データサイエンスは、これらの複雑なデータを効果的に利用する方法を提供します。また、データサイエンスを通じて予測モデリングや機械学習などの技術を理解することで、将来の売上予測や顧客の離脱予測など、ビジネスの重要な側面を予測し、適切な対策を講じることが可能になったり、A/Bテストなどの効果検証にも役立ちます。これは新しいマーケティング戦略やウェブデザインの効果を定量的に評価し、よりデータドリブンな意思決定を実現するための重要なツールとなります。EC担当者がデータサイエンスを学ぶことは、効果的な戦略を立て、ビジネスのパフォーマンスを向上させる上で重要となります。
目次(もくじ)
データサイエンスとは
データサイエンスは、増加するデータから洞察を得るための学際的なアプローチであり、数学と統計、特殊プログラミング、高度な分析、人工知能(AI)、機械学習を、特定の対象分野の専門知識と組み合わせて、組織のデータに隠されている実用的な洞察を明らかにします。これらの洞察は、意思決定と戦略計画策定の指針として利用できます。
データサイエンスのライフサイクル
- データの取り込み:関連性のあるすべてのソースから、未加工の構造化データと非構造化データの両方を収集します。
- データ・ストレージとデータ処理:データのクレンジング、ETL(抽出、変換、ロード)ジョブ、または、その他のデータ統合テクノロジーを使用した、データの重複排除、変換、組み合わせが含まれます。
- データ分析:データサイエンティストはここで、予備的なデータ分析を実施し、データ内の値のバイアス、パターン、範囲、分布を調べます。
- 伝達:最後に、洞察がレポートやその他の可視化されたデータとして提示されます。
- データサイエンティストは、データサイエンスのライフサイクルに伴うすべてのプロセスに直接的な責任を負う必要はありませんが、データの解釈と実用的な推奨の提供に関して、データサイエンティストに頼る組織はますます増加しています。
データサイエンティストに必要なスキル
- 関連する質問を行い、ビジネスの問題点を特定するために、ビジネスを十分に知ること。
- ビジネス感覚とともに、統計とコンピューター・サイエンスをデータ分析に適用すること。
- データの準備と抽出に幅広いツールと手法を使用すること。
- 予測分析と人工知能(AI)を使用し、データから洞察を引き出すこと。
- 結果をビジネスリーダーや他の関係者に明確に伝えること。
データサイエンスは、ビジネスの意思決定をサポートし、新たなビジネスチャンスを発見し、顧客体験を向上させ、業績を向上させるための重要な手段となっています。データサイエンスの力を最大限に引き出すためには、データサイエンティストがビジネスの目標と課題を理解し、それに対応するデータ駆動型の解決策を提供する能力が求められます。
なお、データサイエンスの実践には、PythonやRといったプログラミング言語、SQLといったデータベース言語、そしてHadoopやSparkといったビッグデータプラットフォームの知識が必要となります。また、機械学習や統計学の理論的な知識も重要です。最近では、プログラミングに関する知識が乏しくてもChatGPTやBardを中心としたgenerative AIを活用することでスクリプトの生成が可能になってきています。
勉強しながら資格が取れる⁉︎おすすめのオンライン講座
※講義内容が英語のものもございますが、Google Chromeの拡張機能やDeepLを活用することで日本語に翻訳することができます。
- Google Data Analytics プロフェッショナル認定証
- IBM Data Analyst プロフェッショナル認定証
- Google Advanced Data Analytics プロフェッショナル認定証
- IBM Data Science プロフェッショナル認定証
- ハーバード大学が提供するオンライン講座
- MITが提供するオンライン講座
- 総務省統計局が提供する社会人のためのデータサイエンス入門
- 京都大学が提供するデータサイエンス講座
その他にもGoogle Cloud Skills Boostでデータサイエンスに関連するデータ分析やクラウド、generative AIなどについて学ぶことができます。
データサイエンティストがよく使うツール
Looker Studio
Looker Studioは、ビジネスインテリジェンス(BI)ツールの一つで、データの可視化、共有、探索に重点を置いています。データを分析し、ユーザーがリアルタイムでビジネスに関する洞察を得られるよう設計されています。データに基づく意思決定を容易にし、ビジネスパフォーマンスを向上させます。
Tableau
Tableauは、データの可視化と分析に優れたBIツールです。ユーザーフレンドリーなインターフェースで、非技術者でもデータ分析を行うことができます。これにより、データに基づいたインサイトを簡単に共有し、意思決定をサポートします。
Kaggle
Kaggleはデータサイエンスと機械学習のコミュニティで、データセットの共有、競技やチュートリアルを提供しています。世界中のデータ科学者がスキルを磨き、新しいアイデアを共有し、共同で問題を解決します。
Data Elixir
Data Elixirは、データサイエンス、マシンラーニング、ビッグデータに関する最新のニュース、記事、リソースを集めた週刊ニュースレターです。産業のトレンドや新しいテクノロジー、学習リソースを追跡し、データサイエンスの専門家や愛好家に提供します。
データサイエンス資格一覧
データサイエンティスト検定
データサイエンス能力を明確に測ることができる唯一の検定です。データサイエンス初心者向けに作られているため、データサイエンティストを目指す方にとっては、まず初めに受けるべき検定とされています。
情報技術者試験
IT系の中でも数少ない国家試験の一つで、基本情報技術者試験と応用情報技術者試験の2つがあります。ITに関する基礎知識が体系的に幅広く出題されるため、IT業界に初めて足を踏み入れる方におすすめです。
OSS-DB技術者認定試験
オープンソースデータベースに関する技術力を評価する試験です。データサイエンティストに求められるスキルの一つとして、データベースの設計・開発・運用などの基本的な技術が挙げられます。
統計検定
統計学に関する知識や応用力を評価する資格試験です。データサイエンティストに最も必要だと言われる”分析力”は、統計学の知識をどれだけ有しているかが物を言います。
オラクルマスター
オラクルデータベース管理に必要な知識・技術が評価される資格試験です。データベースの構築運用、SQLによるデータ抽出、データベースの管理など、データベースに関することを網羅的に出題されます。
データベーススペシャリスト試験
データベースの設計・管理に関する試験で、国家資格が取得できます。データベースを企画・要件定義・開発・保守する業務に必要な知識と技術が求められる内容になっています。
G検定・E資格
G検定はAIの使用スキルを評価し、その結果として認定を受けることができます。一方、E資格はAI開発スキルの証明となります。データサイエンティストとして、機械学習や深層学習の知識は必須となり、これらの試験の準備プロセスはそれをカバーするための勉強になります。AI関連の仕事を希望するデータサイエンティストにとって、これらの資格取得は強く推奨されます。
E資格を受けるには、日本ディープラーニング協会が認定したプログラムを修了する必要があります。また、プログラム修了後2年以上が経過すると、試験の受験資格が失効します。したがって、受験準備は計画的に進めることが重要です。
データサイエンスの将来性
データサイエンスの将来性は、ビジネスの視点からも極めて有望です。データサイエンスは、大量のデータから価値ある洞察を抽出し、企業のビジネス戦略を進化させます。これは顧客理解、市場予測、製品分析など、全てのビジネス面に影響を与えます。また、データサイエンスと機械学習は、未来のトレンドを予測し、リスクを減らし、新たな機会を発見します。さらに、パーソナライゼーションを強化し、個々の顧客への対応を向上させます。そして、効率的な自動化により、企業のリソースを最大限に活用します。これら全てが組み合わさり、データサイエンスは競争力を維持し、企業成長を推進する必須の要素となっています。
近年、生成AIと呼ばれる技術が注目を集めています。生成AIとは、テキスト、画像、音声などのデータを生成するAIのことです。生成AIは、データサイエンス分野において、新たな可能性を秘めています。例えば、生成AIを用いて、顧客のニーズをより正確に把握したり、新しい製品やサービスを開発したりすることができます。また、生成AIを用いて、よりパーソナライズされたマーケティングや顧客サポートを行うこともできます。
データサイエンスは、ビジネスのあらゆる分野において、大きな役割を果たすようになっています。生成AIなどの新しい技術は、データサイエンスの可能性をさらに広げてくれるでしょう。データサイエンスは、今後も成長を続ける分野であり、データサイエンティストへの需要は高まっていくと考えられます。
まとめ
データサイエンスは、情報を価値ある洞察に変換するための強力な手段であり、データサイエンティストはこれを操るために必要なスキルと知識を持っています。そのスキルを向上させ、市場価値を高めるためには、様々な資格が役立ちます。これらの資格取得に向けた効率的な勉強法は、理解と応用のバランスを取ることが鍵となります。また、データサイエンスでは多様なツールが使われ、これらに習熟することも重要です。データサイエンスの将来性は明るく、データドリブンな意思決定が求められる現代ビジネスにおいて、データサイエンティストとその資格はますます重要性を増しています。これら全てを鑑みて、データサイエンスへの投資は自己のキャリアを大きく前進させ、企業の競争力を高めるための重要なステップとなります。